2021年9月度 衛生委員会からのお知らせ
従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

9月度の衛生委員会の資料になります。

9月度のテーマは「 ブレークスルー感染  」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

令和3年9月度

衛生委員会資料

産業医 山元 俊行

ブレークスルー感染とは

                                        

 

どの感染症に対するワクチンでも、その効果は100%ではありません。ワクチンを接種した後でも感染する可能性があり、それを「ブレークスルー感染」と呼びます。新型コロナワクチンの場合では、2回目の接種を受けてから2週間くらいで十分な免疫の獲得が期待されますので、それ以降に感染した場合にブレークスルー感染と呼んでいます。

 

一度罹ると「二度罹り」しない感染症もあれば、何度も繰り返し罹る感染症もあります。

前者には麻疹や水痘(水ぼうそう)などがあり、ウイルスが鼻や喉の粘膜から入り込んでから発病するまでの間に、10日~3週間の潜伏期があるため、既に罹っていたり、ワクチンを接種したりして免疫ができている人では、血液中の抗体がそこに入って来たウイルスをブロックしてくれるので、発病しなくて済みます。

後者にはインフルエンザやロタウイルス胃腸炎などがあり、鼻や喉の粘膜に侵入したウイルスは、そこですぐに増殖を始め呼吸器粘膜を傷害し、数日で発病(発症)します。ワクチンを接種して血液中に抗体があっても、呼吸器粘膜の感染を防ぐことは難しく、発病を防ぐことも十分ではありません。でも抗体は肺の中に滲み出てきて肺炎を起こさないようにブロックすることで、重症化を防ぎます。

新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じように、鼻や喉の粘膜で増えて数日で発病します。さらに肺にまで感染が及ぶと重症化の恐れが出てきます。血液の中の抗体は鼻や喉の粘膜では効き目が弱く、感染を防ぐ効果はあまり強くありませんが、肺では重症化を防ぐ効果を発揮します。

 

また、ウイルスは変異を繰り返し、何か自分に有利な変化を遂げたものがやがては主流のウイルスになります。デルタ株のウイルスは、感染力が拡大しただけではなく、ワクチンによって獲得された免疫が効きにくいと考えられています。

ファイザー社のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは、従来株のウイルスに対しては、発病を防ぐ効果9495%に加え、イスラエル(ファイザー社ワクチンを使用)においては感染そのものを防ぐ効果が91.5%もあると報告されていました。しかし、その後イスラエルではデルタ株にほぼ置き換わってしまい、その結果、発病や感染を防ぐ効果が64%まで下がってしまいました(一方、入院を防ぐ効果は93%と高いレベルを維持しています)。これは、デルタ株に置き換わってしまったことに加え、2回の接種が終了してから半年前後経ってしまったことも影響していると思います。そこでイスラエルを含む幾つかの国々では、ブレークスルー感染が増えて来たことを受けて3回目の接種を始めています。

 

ワクチン接種を2回済ませた人のブレークスルー感染はデルタ株に置き換わった後で増えて来ましたが、ワクチンによって重症化を防ぐ効果は高いレベルで維持されています。米国CDCのデータによると「ワクチン接種を済ませた人が、新型コロナウイルスのブレークスルー感染のために亡くなる恐れは0.001%未満」と報告されています。ワクチンを接種していれば、ブレークスルー感染が起こってもほとんどの場合、重症化を免れます。しかし、感染することはあるし、感染しても発病しないことも多いので自分ではそれと気付かないままでいます。

 

もしマスクを着用しないで会話をしたり、3密の場所に出入りしたりすると、他の人にうつしてしまう恐れがあります。ワクチン接種が十分に進んでいない間は、その人達に感染が拡がらないように、これまで通りの感染対策を続けていくことが大切です。

 

厚生労働省HP 「新型コロナワクチンについて 新型コロナワクチンQA」 より改編