日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
8月度の衛生委員会の資料になります。
8月度のテーマは「インフルエンザ対策について」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2022年8月度
衛生委員会資料
産業医 山元 俊行
2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について
インフルエンザは、国内で新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年2月以降、患者報告数は急速に減少し、2020-2021年シーズンおよび2021-2022年シーズンの現在まで、インフルエンザウイルス検出の報告はほとんど見られておらず、危惧されていた新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行もありませんでした。これは、新型コロナウイルス感染症対策として普及した手指衛生やマスク着用、3密回避、国際的な人の移動の制限等の感染対策がインフルエンザの感染予防についても効果的であったためと考えられます。しかしながら、2021年後半から2022年前半にかけて、北半球の多くの国ではインフルエンザの小ないし中規模の流行がみられています。
北半球の冬季のインフルエンザ流行の予測をするうえで、南半球の状況は参考になります。オーストラリア政府は定期的にインフルエンザの発症状況を報告していますが、2020年および2021年は、わが国同様、インフルエンザ患者は極めて少数でした。しかしながら、2022年は4月後半から報告数が増加し、例年を超えるレベルの患者数となっており、医療の逼迫が問題となっています。今後、海外からの入国が緩和され人的交流が増加すれば、国内へウイルスも持ち込まれると考えられ、わが国においても、今秋から冬には、同様の流行が起こる可能性があります。また、過去2年間、国内での流行がなかったために、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられます。そのため、一旦感染がおこると、特に小児を中心に社会全体として大きな流行となるおそれがあります。
このようななかで、6月22日、東京都内の小学校において、2年3か月ぶりにインフルエンザによる学年閉鎖が発表されました。冬季のシーズンに入る前に、このような季節外れの流行が起こる可能性もあります。
2021-2022年には、欧米では、インフルエンザウイルスのタイプのうち、主としてA香港型と呼ばれるウイルスによる流行がみられています。中国でも、今年になってA香港型が増加しています。また、オーストラリアで本年度に検出されたインフルエンザウイルスの型が判明したもののうち、約80%がA香港型でした。そのため、今シーズンは、わが国でもA香港型の流行が主体となる可能性があります。A香港型が流行すると、インフルエンザによる死亡や入院が増加することが知られているので、特に警戒が必要となります。
インフルエンザワクチンには、4種類(A型2種類、B型2種類)のウイルス型が含まれており、A香港型もそのうちの一つです。一般に、ワクチンは、発症予防効果とともに重症化防止効果が期待できます。欧州からの報告では、65歳以上の高齢者において、ワクチンを接種した場合は、接種しなかった場合に比べて、A香港型感染による入院を抑制したと報告されています。
わが国においては新型コロナウイルス感染症の発症者は再増加が続いています。そのような中で、ワクチンで予防できる疾患についてはできるだけ接種を行い、医療機関への受診を抑制して医療現場の負担を軽減することも重要です。
今季も例年通りに、小児、妊婦も含めて、接種できない特別な理由のある方を除き出来るだけ多くの方に、インフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨します。
一般社団法人 日本感染症学会 提言を改編