2024年3月度 衛生委員会からのお知らせ
従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

3月度の衛生委員会の資料になります。

3月度のテーマは「GLP-1ダイエットについて」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2024年3月度

衛生委員会資料

産業医 山元 俊行

楽して痩せる「GLP-1ダイエット」

最近、インターネット広告でGLP-1ダイエットと称して「飲むだけダイエット」「ストレスフリーで痩せられる メディカルダイエット」など、医療の力で楽して痩せることができると宣伝されています。

当院でも薬を処方して欲しい、この薬を使っても大丈夫かなどの質問をいただきます。

 

GLP-1とは、もともと私たちの体に存在するホルモンの一種で、食事をして消化管の中に食べ物が入ってくると、小腸からGLP-1が分泌されます。GLP-1は、膵臓を刺激して血糖を下げるインスリンが分泌されます。

また、GLP-1には、インスリンを分泌させる作用のほかに、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制したり、すい臓のインスリンを分泌するβ細胞を増やす作用が動物実験で確認されています。その他、摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用や食欲を抑える作用などもあります。

 

GLP-1が作用するには、GLP-1がくっ付く受容体という場所が必要で、その受容体にGLP-1がくっ付くことで、刺激が伝わり、様々な作用が発現します。現在、GLP-1受容体にくっ付いて、GLP-1と同様の作用を起こさせる薬が数種類発売されており、GLP-1受容体作動薬と呼びます。糖尿病の患者さんに、このGLP-1受容体作動薬を使用すると、血糖を下げる作用から血糖値が改善し、また食欲を抑えることから体重減少が期待できます。

ただ、副作用も報告されており、専門医の適切な管理下で使用することが推奨されています。

 

 GLP-1受容体作動薬を使用した際は,重大な副作用として低血糖症状(脱力感,高度の空腹感,冷汗,顔面蒼白,動悸,振戦,頭痛,めまい,嘔気,視覚異常等)や急性膵炎胆石症、胆のう炎などが起こりえること、また、比較的頻度の高い副作用として,悪心,嘔吐,下痢,便秘,腹痛などの消化器症状が報告されています。

 

一般的に、医薬品の副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合は、医療費や年金などの給付を行う公的な制度として「医薬品副作用被害救済制度」があります。

GLP-1受容体作動薬を適応外の美容・痩身・ダイエット等の目的で使用して重篤な健康被害が生じたとしても

適正に使用したと認められず、この制度の救済給付を受けられない可能性が非常に高いため注意が必要です。

 

 ダイエットのため高価なGLP-1受容体作動薬を使用して、運よく副作用も出ず一時的に痩せることができても、食習慣、運動習慣を改善しない限り、薬をやめれば、すぐにリバウンドしてしまいます。

 

体重を適正体重(ボディマス指数※で22~25)に保つには、基本的には食事療法と運動療法しっかりと行う必要があります。食事は、1日3回、バランスよく食べ、飲酒・間食は極力減らす。運動は、有酸素運動を中心に、少なくとも1週間に3回は、30分程度行うことが基本になります。一度付いてしまった脂肪を減らすには、努力が必要で、楽してダイエットしてもすぐにリバウンドしてしまいます。

高価な薬を購入してお金をどぶに捨てることなく、食事療法と運動療法しっかりと行っていきましょう。

 

※ボディマス指数 Body Mass Index:肥満指数)、計算式:BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}